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2007年5月号 ワタミ株式会社 代表取締役社長・CEO 渡邉美樹さん

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taidan2007-05.jpg 最近は、政府の教育再生会議委員や、報道番組のコメンテーターとしても大活躍の渡邉社長。外食事業から、農業、介護、環境、教育、中食(なかしょく)、そして個人では、学校法人理事長、医療法人の理事、NPO法人理事長など、その活躍のステージは限りなく広がっています。久しぶりの再会に、話も弾みました。(写真右が渡邉氏)

風を読み、風を起こしてください


高木 お久しぶりです。前回の対談が2005年の8月ですから、1年半ぶりになりますね。

渡邉 もうそんなになりますか。まるで昨日のことのようです。

高木 前回の対談では、割箸をやめませんかというお話をさせていただきましたが、『地球村』の企業会員でもあるマルシェグループさんが、全店洗い箸に切り替えて、マスコミでもかなり取り上げられました。その上、いくつかのお店では、箸のリザーブを始めて、それがまた人気店になっているそうですよ。

渡邉 箸のリザーブですか?

高木 お店の洗い箸を使うだけではなく、「マイ箸を使いたい」というお客様のために、お店がマイ箸を預かるシステムを始めたんです。このお店では、店員さんたちがお客のお名前と箸とを覚えるよう努力していましてね。来店と同時に、「○○さま。こちらのお箸でしたね」と自分の箸が出てきたら嬉しいでしょう ?部下でも連れていたとしたら気持ちがいいでしょう。売り上げが上がったそうですよ。洗い箸の方も、全国でもお客からはクレームゼロだそうです。お客様からの評判もいいそうです。ワタミさんも、森林保護に配慮して、竹箸を使われているということでしたが、その後いかがですか。

渡邉 間伐材を使いたいのですが、全部を間伐材にすることは物理的に不可能なんです。そこで我々も「洗い箸導入」を検討したのですが、一つひっかかってしまったのは洗剤のことです。ワタミに環境部門の会社があるのですが、「洗い箸にして洗剤を使うということでは環境負荷はほぼ変わらない」という報告が出ました。それでストップしている状況です。実際はどうなんでしょう。

高木 なるほどね。こういう問題は単純な答えはありませんね。しかし、あえて言えば「GO」です。導入すべきだと思います。私は、こういうことは「風の読み方」だと思うんです。例えばワタミさんがしっかりと環境負荷を考えて洗い箸は使わないという判断をされたとしても、「ワタミはまだ割箸なんだ…」という評価はマイナスでしょう。 逆に、ワタミさんが洗い箸を導入するということは、市民の環境意識に大きな風を起こせるかもしれません。

渡邉 わかりました。貴重なご意見、ありがとうございます。

高木 トップが何かをやりたい時に、技術者や専門家が異論を唱えるのは当然です。専門家たちは専門分野で意見を言うのです。しかしトップは、もっと多くの要素、大きな視野で決断しなければなりません。トップは、つねに風を読むことが必要です。

「ワタミの森」を本気でつくります!


渡邉 今、森をつくろうと燃えているんですよ。「ワタミの森をつくる会」といって、まだ1 年前に始めたばかりですが、すでに千葉に9ヘクタールの森をつくりました。千葉に農場を持っているのですが、その隣の森を、社員たちがボランティアで手入れしています。ワタミグループ全部の経済活動で排出されるCO2量を、植物の光合成によって吸収するには、およそ4000ヘクタールの森が必要なのだそうです。少しでもCO2削減を担うことができればと、その4000ヘクタールを一つの目安として、森林をつくりはじめました。

高木 それはすごい ! 千葉でつくっている森は、元々はどんな場所ですか。荒れた森林だったんですか?

渡邉 以前は森林でしたが、長らく放置されていたため、ほとんどの木が枯れて、病気になっている状態です。今、下を伐採しながら、枝を切って日光が地面に届くように手入れをしています。

高木 下草刈り、枝打ちですね。

渡邉 そうです。4月には森開きをしようと計画しています。「ワタミの森をつくる会」という名前でNPO法人の申請をしようとしたら却下されまして、今、ネーミングを考えているところです。

高木 実は、私も松下電器に在職中、社長に「松下の森」という全国的な森林保護運動を提言し、名称には苦労しました。松下の森⇒松下地球村(グローバルビレッジ)⇒松下MGVとなり、最終的に「松下グリーンボランティア」(MGV)として実現しました。松下電器の支社、分社、事業場が全国にありますから、現在、全国的に地域の森の保存と再生に動いています。

渡邉 なるほど…「ワタミグリーンボランティア」もいいなあ。そういう名前をつけても、松下さんにご迷惑がかからないでしょうか?

高木 問題はないと思います。

渡邉 では検討してみます。

高木 CO2の削減にそこまで本気で取り組まれるのでしたら、ストップ・ザ・温暖化キャンペーンにも企業として参加されませんか? キャンペーンサイトもかなりバージョンアップしまして、市ぐるみで参加しているところもあります。

渡邉 そのお話、ぜひ詳しく聞かせてください。

高木 もちろん喜んで。よろしくお願いしますね。

主役の子どもが学校を選ぶ仕組みを


高木 では、話題の「教育再生会議」のお話を聞かせてください。会議は、何人で構成されているのですか。

渡邉 全部で17人です。教育には、国と、教育委員会と、学校と、将来の受け皿である企業とが関わっています。私は、神奈川県の教育委員をやっていまして、学校経営もしていますし、企業としては年間400~500人の新卒者を採用しています。教育の問題をトータルで見られる立場にいて、みなさんとはちょっと違った視点で発言できるのではないかということで、委員をお引き受けしました。

高木 渡邉さんの考える教育再生とは、どんなことでしょうか。

渡邉 教育においては、その仕組みを変えなくちゃだめだと思っています。たとえば、教育にバウチャーを一つの形とした競争原理を持ち込み、努力しない先生の給与は下がる、子どものことを考えない学校は子どもたちから選ばれない、そんな仕組みを作ったらどうかと思うのです。

高木 そのバウチャーというのは何ですか?

渡邉 バウチャーというのは、補助金政策の考え方です。実は現在、国は生徒一人当たりに、私学なら30万円、公立なら100万円くらいの補助金を出しているんです。私学の場合は、国の補助金30万円と、生徒たちから30~40万円の授業料を受け取って経営を成り立たせているんです。それを見直して、子どもの進学時に、国が教育クーポンとして、直接、親に支給するんです。親は、国が自分の子どもに30万円、100万円という補助金を使っていることをきちんと知ったほうがいいし、そのお金を一旦は教育費として受け取り、自分たちが選んだ学校に子どもが通うために使うのです。仮に、いじめを放置しているような学校や、財務体質がおかしい学校を親も子どもも選ばないから、子どもが集まらなくなり結局はつぶれていく。バウチャー制度によって、教育に自由競争の原理を持ち込めば、学校側が努力しなくちゃいけない状況ができるのです。

高木 とてもおもしろい考え方ですね。

渡邉 私はこれしかないと思っています。私が私学の経営に入って一番びっくりしたのは、先生や学校が、生徒の方を向いていないということなんです。生徒の方を向いていなくても食べていけるなんておかしいですよね。お店は、お客様の方を向いていなければ食べていけないので非常に驚きました。

高木 たしかに…。先生は校長先生を、校長先生は教育委員会を、教育委員会は文科省を向いている…。主役が逆転していますね。おかしなことですね。

渡邉 その通りです。教育の主役は子どもなのです。

高木 ああ、それは私も常々思うところです。教育は、主語が教師や親の言葉です。子どもが主役なら、子どもが主語になる言葉、「学問」「学習」「学育」であるべきです。江戸時代は、「この先生に、このことを学びたい」と自ら願って学びに行っていたわけです。だから学問所、塾、寺子屋と呼んだのです。バウチャーの考え方は、それと同じですね。主役である子どもたちが、自ら学校を選べる仕組みを作るのでしょう?

渡邉 その通りです。子どもたちの幸せのためにだけ学校があると私は思っています。先生の都合や学校の都合が優先され、そこに子どもたちが押し込められるのはおかしいのです。お金の流れを変えることで、主役を子どもたちに変えたいのです。教育再生会議でいつも私が繰り返し話しているのは、いじめをなくそうとか出席停止処分にしようとか、そのような細かい議論は他でやってもらって、この会議では教育を再生させる根本的な仕組み作りを話し合いましょうということなんです。そこで、私は仕組みを変える2つの提案をしました。一つはバウチャー。もう一つは大学入試の廃止です。というのは、今、大学は誰でも入れる時代になろうとしています。九九もできない子が大学生になることも否定できません。そして大学4年間、遊んで遊んで、さらに物事がわからない人間になっていく。これは日本を滅ぼしかねない流れなんです。そこで学習指導要綱があるように、大学の入学資格、卒業資格、この2つのボーダーを、国が持つようにすべきだと考えたんです。日本の教育レベルのために、大学のあり方を考えようと提案しているのです。

高木 それは画期的ですね。学歴も資格審査にすれば、現状の教育問題は大幅に改善し、ほとんど無くなるかもしれませんね。ところで、再生会議では、どの範囲までを議論しているのですか。

渡邉 大学院まで含んでいます。日本の教育の未来を考える会議ですから。

高木 その2つの提案は、どんな感触でしたか。

渡邉 大学入試廃止にはみなさん引きましたけれど、バウチャーの方は手応え半々というところです。今、さまざまな意見が出ていますので、何とか年内中に法案までたどり着きたいと思っています。

高木 楽しみですね。がんばってください。私は、小冊子「ありがとう」と「だいじょうぶ-いじめ-」をだしました。これは教育再生にもヒントになると思っています。ご意見をいただけたらと思います。よろしければ、社員の方にもプレゼントしてください。

渡邉 ありがとうございます。さっそく読ませていただきます。

高木 きょうは、ありがとうございました。マイ箸一億人運動も、温暖化防止も、よろしくお願いします。

■ワタミ株式会社
http://www.watami.co.jp/

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