2009年3月アーカイブ

【巻頭言】 お百姓さん (2009年3月)

百姓とは農民のことだと思っている人が多いと思いますが、
「百の姓をもつ者たち」「百の仕事をする人たち」、つまり庶民を表す言葉でした。
庶民はほとんど農民であったため、だんだん百姓=農民というイメージになってきましたが、
もともとは農業、漁業、林業という職業はありませんでした。
土地があれば田畑にする。海があれば漁をする。山があれば山仕事をする。
そのどれか一つではなく、できることなら何でもやったのです。
余裕があれば牛や馬やニワトリを飼ったのです。

私のいなか(滋賀県虎姫町)も田畑が主でしたが、牛やニワトリ、鯉(こい)も飼っていました。
子供のころ、家族で遊びに行くと、必ずニワトリか鯉を御馳走してくれました。
時々、肉を出してくれた時もありました。
「坊、これ何の肉か知ってるか」と聞かれて「牛!」と答えると、
「違う」と言われました。ある時は馬、ある時はイノシシ、ある時はヤギでした。
山ではシイタケを育てていたし、マツタケ、タケノコ、柿やあけびを採って来てくれました。
とにかく珍しいものがたくさん食べられました。
さらにカイコを飼っていました。そのあたりは、みんな、そんな風に暮らしていました。
農業でもなく、林業でもなく、しかし、野良仕事も山仕事もしていました。
米も野菜も作っていました。家畜も鯉も飼っていました。
1日中、忙しく、いろんなことをしていました。まさに百姓だったのです。

うちの家族は、よくいなかに遊びに行きましたが、そういえば、いなかの人は、
都会の私の家に遊びに来ることはありませんでした。
いま思うと、その家はお金はあまりなかったのでしょうけれど、とても豊かに暮らしていたのです。
思えば、それが昭和30年代。ほんの50年前でした。

もう少し、その頃を振り返ってみます。
一つの村は一つの家族のように暮していました。
農繁期は学校も休みになり、みんなで田植えや刈取りをしました。
なにかあるとみんなで寄りあい、みんなで祝い、みんなで大騒ぎしました。
村で生まれて、村で結婚し、村で暮らし、村で死んでいくのが当たり前でした。
中には、飛び出していく者もいましたが、それはわずかでした。
村には、鍛冶屋もいた、炭焼きもいた、焼物師もいた、医師もいた、葬儀屋もいた。
必要な仕事は、必ず誰かがやった。誰かができるようになった。
しかし、それも職業ではなく、ふだんはみんなと同じ、百姓でした。
大雨で川があふれそうになったら、みんなで土のうを積み、堤防が決壊したら、
みんなで堤防を直し、みんなで田畑も道も復旧しました。
台風で家が壊れたり、みんなで家を建て直しました。
みんなが家族だから、老後の不安もなかった。
そもそも「老」あったが、「老後」はなかった。そもそも「老後」ってなんだろう。
年金、生命保険、老人福祉、介護など、現在のような国の制度や
社会システムなどは何もなかったが、みんな安心して暮らしてました。
GNP(国民総生産)はいまの30分の1だったけれど、GNH(国民総幸福)はいまよりはるかに高かった。
日本もブータンのようだったのではないだろうか。
この50年、日本が努力してきた結果が現状だとしたら、いったい何をやってきたのだろう。
この50年で急成長した大企業が軒並み、
「史上最大の赤字」「大量解雇」「工場閉鎖」「拠点集約」「吸収、買収、売却」。
失業、失業で大騒ぎ。

いまこそ、これを機に方向転換が必要なことは明らかだと思う。
まず、食料の自給自足をめざすこと。
日本とドイツの違いをかんたんに述べます。
・日本は、減反政策と補助金、新農業法により農家の生産意欲を削いで来た。
・ドイツは、正反対。欧州共同体(EC)で共通農業政策(CAP)を導入。
生産増加、農家所得の維持、市場の安定化を図ると同時に、
消費者に合理的な価格で食料品を供給することを目標とした。
輸入農産物には関税と課徴金をかけ、域内の農産物は補助金によって価格を維持し、
域内農家を手厚く保護した。
農家は生産意欲をかきたてられ、土地の集約化によって生産は増加した。
いまからでも遅くはない。今までの間違いを改めること。
農政を180度転換しなければなりません。

★日本政府として
・ドイツ(EC諸国)のように、自給自足をめざして、農業、農地を守ること
・企業が農地を買収して農地以外に転用することを禁止すること
・農作物や食料の輸入に関税と課徴金をかけ、その財源で農業を復興すること

★私たちのできること
・国内の農作物を買うこと。輸入ものをできるだけ買わないこと
・家庭菜園、市民農園、援農をすること。お百姓さんをめざすこと
・飽食やぜいたくをやめる。必要な意思表示をする

※参考 『農協の大罪』(山下一仁著 宝島社新書)

【巻頭言】 日本の経済の仕組み  (2009年3月)

新聞に、「鳥取のかんぽの宿、1万円で売却、落札業者は6000万円で転売」とありました。
調べてみると「建設費は10億円」でした。
つまり国民の10億円で建てた施設が、赤字経営だから1万円でたたき売り。
落札業者は6000万円で売って暴利をむさぼった。ひどい話です。
さらに、「かんぽ79の施設をオリックスに109億円で売却予定」。
調べてみると「建設費2400億円」。それを96%の値引きでたたき売る予定なのです。
その損失は、国民(あなたや私)の郵便貯金と簡保なのです。
この施設を作った責任、赤字経営の責任、たたき売りの責任はどうなるのでしょう。

貯金、保険金、年金は、私たちは「自分のお金を預けている」と思っていますが、そうではありません。
郵便貯金や簡保は日本郵政(以前は総務省・郵政省)が、
銀行預金や保険金は銀行や保険会社が、年金は社会保険庁が運用しています。
つまり私たちは「投資している」のであり、それを国や民間の金融機関に任せているのです。
投資にはリスクがあるのは当然で、儲かれば増える(利子が付く)し、損をすれば減ります。
場合によっては無くなってしまう場合もあるのです。

現在、日本の赤字(地方の赤字を含めて)は世界最大の1000兆円以上。
これは、国民が背負っているのです。一人当たり約800万円。家族4人なら3200万円。どういう意味かおわかりでしょうか。

この巨額の赤字はなぜ生まれたのでしょう。
国は、福祉や医療、教育、公共事業をしていますが、その中には多くの無駄があります。
特に公共事業は、無駄なダム(先月号で書いた熊本県の川辺川ダム、淀川の大戸川ダムなど多数)、
車の走らない自動車道路、ムダな埋め立て(長崎県諫早湾、島根県中海の干拓など)、
見通しのつかない空港(静岡空港、茨城空港など)、
各地に作ったリゾート(シーガイヤ、グリーンピア、チボリ公園など)、
数えきれないくらいです。同じ場所の「掘ったり埋めたり」の無駄な道路工事や護岸工事。
その中には、いまも赤字を垂れ流しのものもたくさんあります。
「かんぽの宿」もその一つ。その他にも、厚生年金にも多くの赤字施設があります。
さらに、赤字施設が信じられない価格で売却されているのです。
会社なら倒産したり、社長は辞任しますが、国は倒産もせず、
責任者は辞任もしないから、赤字の垂れ流しが続いているのです。
巨額の赤字の大部分は、間違った投資、まちがった公共事業です。

さらにたちが悪いことに、その張本人(政治家や官僚)は、
公共事業を発注する「特殊法人」や公共事業を受注する「特定企業」に天下りして
不適切な公共事業を推進し、「天下り」を転々とすること(渡り)で高額の退職金を
何回も受け取るのです。それが、政、財、官の悪のトライアングル。官僚政治です。
そのような仕組みの結果、1000兆円を超える巨額の赤字が生まれたのです。
そして、その赤字が毎年20~30兆円ずつ増えているのです。

★その赤字は、なぜ放置されたのか。
国家予算には、国会で審議される一般会計と、国会で審議されない特別会計があります。
一般会計は新聞やテレビで報道されている「83兆円」ですが、特別会計は「200兆円」。
一般会計よりはるかに大きいのです。
それを動かしているのは国会ではなく官僚(霞が関)であり、
それが、「官僚政治」「政権が代わっても政治は変わらない」と言われる理由です。
一般会計と特別会計の総額が本当の国家予算ですが、その実態は非常に複雑で
重複もあり、実際の国家予算の総額は約214兆円です。

★より重要なこと
一般に知られているのは「国家予算83兆円、税収54兆円、赤字29兆円」ですが、
実際は「国家予算214兆円、税収54兆円、赤字160兆円」です。
では、その赤字は誰が?
それは、国民(あなたや私)の預貯金、保険金、年金なのです。
つまり、国民の預貯金、保険金、年金1400兆円のうち、
1000兆円はすでに投資されて損失になってしまったのです。

★事実を知ること
国民の預貯金、保険金、年金の大部分は、無駄な公共事業、
不適切な公共投資によって失われたのです。今も、その張本人の官僚の給与や、
官僚OBの不正な給与や退職金や賄賂に使われているのです。
いま、議論されていることや、考えられる可能性は、

1.消費税を上げて税収を増やす。
2.鎌倉幕府の「徳政令」のように、借金をすべてなかったことにする。
3.政府が1000兆円のお金(紙幣)を発行する。

いま、みんなが一斉に預貯金を引き出そうとしたら、どうなると思いますか。
10年後、20年後、年金は全額支払われると思いますか。
10年後、20年後、死亡時の生命保険は全額支払われると思いますか。

※参考 「日本人が知らない恐るべき真実」(安部芳裕著 晋遊舎)

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