2010年2月アーカイブ

【巻頭言】 「アバター」 (2010年2月号)

話題の映画『アバター』を観ました。一言でいえば、よかった。おすすめです。
3D(立体映像)で、吹き替えも字幕もあります。
「アバター」というのは「自分の分身」という意味です。

この映画を観たとき、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』と似ていると思いました。
しかし、もっと似ていると思ったのは、『断絶への航海』(早川書店)でした。この本は、以前、『地球村』の推薦図書として紹介していました。私の一番好きな本(ベスト10)の1冊です。
今回は、映画『アバター』ではなく、『断絶への航海』について紹介したいと思います。
『断絶への航海』は、未来社会について見事に描いています。この本は1982年刊(日本語訳は1984年刊)。著者はジェイムズ・P・ホーガン。

20××年、人類は滅亡寸前の地球から光速宇宙船(3万人)で脱出し、居住可能な星を探して宇宙を放浪する。放浪の果てに、居住可能な惑星ケイロンにたどり着く。
その星には、高い文明世界があった。はるか昔、実験的に飛び立った人類が先に到着し、すでに理想の社会、『地球村』を実現していたのだった。

ケイロンにはお金がなかった。
その結果、所有がなかった。ビジネスは存在しなかった。
その結果、みんなが平等であり、上下はなかった。長と名のつく人はいなかった。
だから支配も、命令もなかった。みんなに必要なことを、みんなで話し合い、みんなで協力して実現した。みんなが家族のようだったが、みんなが自立しているから、みんなが自分の責任で自主的に動いていた。
その結果、ケイロンには、地球のような法律や憲法がなかった。警察も刑務所も裁判所も必要がなかった。地球のような学校も、教育も、試験も、通知簿もなかった。
人が人を教えるということも、人が人を評価することも、人が人を裁くこともなかった。

ここまでで、この世界のことがイメージできましたか。
この世界をイメージすることは、未来のビジョンには、とても大切なことです。
「それは夢物語、ありえない」と思ったとしたら、なぜ、そう思うのか。
それこそが、現代の社会の解決すべき問題点なのではないだろうか。
この小説は、そのことを気付かせてくれます。

ケイロンの世界にやってきた地球人たちは、「お金のいらない国」に迷い込んだ現代人のように、はじめはショックを受け、戸惑い、驚きます。
スーパーには何でも豊富に置いてあるが、すべて無料。
食べ物も、洋服も、すべて無料。
ケイロン人は、突然やってきた3万人もの地球人のために、立派な住宅を提供してくれたがそれもすべて無料。それに対する支払いも労働も、なにも請求しなかった。
次のような会話が何度も交わされます。

地球人「本当に、ただですか」「何も支払わなくていいんですか」
ケイロン人「もちろん」
地球人「なぜ、そんなことが可能なんですか」
ケイロン人「???」
地球人「働かなくてもいいんですか」
ケイロン人「働きたくなければ、それでもいいよ。でも、それで満足できますか」
地球人「???」

地球人「どうして軍隊がないのですか」
ケイロン人「なぜ、要るのですか」
地球人「自分たちを守るために」
ケイロン人「何から守るのですか」
地球人「???」

地球人「どうして政府がないのですか」
ケイロン人「どうして政府がいるのですか」
地球人「社会秩序を守るために」
ケイロン人「何から守るのですか」
地球人「???」

ケイロンでは、「他人より豊かになろう」という必要がない。
みんなの幸せを妨げるものに対しては、みんなで協力して問題を解決する。
その世界に馴れたころ、ケイロンの世界を乗っ取ろうとする地球人グループが現れた。
地球人には軍隊もあるし、武器もある。それを統括する政府もある。
ケイロン人には高度な文明、科学力はあるが、軍隊も政府もない。
組織も命令系統もない。戦えば勝てる可能性は十分にある。
移民した地球人の中で議論が始まった。せっかく友好的で、理想的な社会を攻撃し、乗っ取り、支配することに多くの地球人は反対だったが、地球人政府は「攻撃」の決定をした。
戦うことを知らないケイロン人に、地球人の軍隊が襲いかかった。
はじめは、攻撃は成功し、破壊し、征服していった。
しかし・・・・戦況は大きく変わり始める。
軍隊もない、組織もない、命令系統もないケイロン人が、本気で戦い始めると・・・(続く)
このあと、どうなると思いますか。
関心のある方は、ぜひ、本をお読みください。

【巻頭言】 「必要とは」 (2010年2月号)

必要とは、「必ず要る」と書きます。
必要なもの(必ず要るもの)ってなんだろう。

自然界のすべての生き物にとって必要なものとは、食べ物、水、空気、住むところ、寝るところ、仲間、家族くらいだろう。
人間の長い歴史をみても、農耕を始めるまでの100万年以上、人間にとっても必要なものはおそらく他の動物と同じだったはずです。
農耕は文明への第一歩と言われますが、同時に、破局への第一歩でした。
農耕によって定住がはじまり、住居ができ、蓄積や所有が始まり、豊かさが可能になったのです。それをより効果的にするために、道具、家具、財産、それを守る仕組みとして、社会制度、身分、権力、支配、武力、軍隊、国家、国境、領土、侵略、戦争という現状の世界ができたのです。

★わが家の変化
私は昭和22年生まれ。何もない時代から、モノにあふれる現在までを経験してきたので、かんたんに振り返ってみます。
幼いころ、家にあった電気製品は電球とラジオだけでした。
小学時代、わが家に電気洗濯機、電気掃除機、白黒テレビがやってきました。
中学時代、電気冷蔵庫、クーラー、電子レンジがやってきました。
高校時代、東京オリンピックを見るために、カラーテレビ(19インチ)に買い換え、ステレオを買い、昭和40年についに自家用車を買いました。
その一つひとつが私には衝撃的な出来事でした。
あらためて考えてみると、物を買うのは、「それが必要」というより、「みんなが持っているから」とか、逆に「みんなが持っていないから」という要素の方が大きかったと思います。

★必要
本当に必要なものは、先に述べたように、「食べ物、水、空気、住むところ、寝るところ」くらいだろう。それ以外のものは、「本当に必要なもの」ではないはずです。
企業が次々に出す「新製品」は、すべて「不必要なもの」だろう。
つくづく、私たちはコマーシャルに踊らされているのだろう。
コマーシャルと言えば、電通が1970年に提唱した「企業戦略十訓」がすごい。
1.もっと使わせろ  2.捨てさせろ 
3.無駄使いさせろ 4.季節を忘れさせろ
5.贈り物をさせろ  6.組み合わせで買わせろ
7.きっかけを投じろ 8.流行遅れにさせろ
9.気安く買わせろ 10.混乱をつくり出せ

★流行、はやり
その企業戦略十訓の最大の成果が「流行」というものだろう。
「去年の流行は○○、今年は△△、来年は□□」
流行とは、「要るものを捨てさせ、要らないものを買わせる企業戦略」であり、
流行とは、「企業がデザイナーと結託して作り出した、要らないものを買わせる作戦」なのです。ファッション、アパレル、自動車、家具、あらゆるものに流行を作ったのです。
バレンタインデーのチョコレートなども業界の戦略です。

★値打ち
ところで、ものが10倍普及すると値打ちは10分の1に落ち、100倍普及すると値打ちは100分の1に落ちます。持っていることの満足度もステータスも10分の1、100分の1に落ちるのです。これは大変なことです。「あれだけ苦労して買った」ことによる満足感、幸福感が、短期間に10分の1、100分の1に暴落するのですから。
となると、それに代わる満足感、幸福感を求めることになるのでしょう。
ということで、より大きな満足感を得るためには、より高額な商品を買わなければなりません。企業も、より高額商品を売ることを目指すことになります。以前は3C(カラーテレビ、クーラー、マイカー)でしたが、いまや、最大の買い物は住宅(マイホーム)です。
アメリカ政府の「貧しい人にもマイホームを!」という住宅政策は、サブプライム(貧しい人たち)の「マイホームがほしい」という気持ちにつけこんだ国家戦略(詐欺)でしたが、それが破たんして「リーマンショック」が起こり、世界金融破たんが起こりました。

★進むか、戻るか
このまま進めば、どうなるか。
たとえば食糧は?エネルギーは?資源は?地球環境は?
本当に必要なものは、「食べ物、水、空気、住むところ」、日本で最も危険なのは、食糧だろう。食糧、エネルギー、資源の輸入が止まるまでに、少なくとも食糧は自給できるようにならなくてはいけません。

★元に戻さないと・・・
日本経済は、50年間で15倍に増えました。経済(GDP)だけではなく、資源の消費も、CO2の排出量も、環境破壊も、ゴミの量も、ほぼ比例して増えています。
いま、それが問題だとわかったのだから、元に戻すしかないのです。
毎年5~10%ずつ経済成長を続けたのだから、毎年5~10%のマイナス成長をすればいいのです。このことの必要性をゆっくりでも理解してください。本気ならできます。
自動車を普及させるのは50年かかったけど、やめるのは50年もかかりません。やめるのはすぐ。免許を取ったり自動車を買うのはお金も時間もかかるし努力も必要。
でもやめるのはすぐ。どんどん、アイデアが出てきます。

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